似ているところ
両者の作品を読んでいると、あれ?なんか雰囲気が似てるぞ?と思うでしょう。
それもそのはず。
二者は外国文学の翻訳それもヨーロッパ文学に強く影響を受けています。
そのことはちょっと調べればわかることではありますが、ざっくり言って系統は似ているということは確かです。
ヨーロッパ文学に詳しくないですけど、常識として知っていなければならないのは
- 春樹はアメリカ文学
- 大江はフランス文学
に強く影響を受けているということ。
これは結構でかい差です。
両者の主張も雰囲気もどこかそれに近い。
- 春樹はアメリカ的な物質的豊かさや自由さ。
- 大江はフランス的な自由平等博愛と芸術。
- 春樹は野球が好きでアメリカ的。
- 大江は障害のある子を音楽家にしました。フランス的な雰囲気。
読めば読むほど生活スタイルがその国のスタイルに憧れる形で似ています。
しかし根本が日本人なので、日本的なアメリカ像とフランス像な感じもします。
これは研究者も言ってることですね。
そして共通点としてはどっちも浮世離れというかSFチックな話になる。
そして難しい言葉を使わない。
難しいというのは日本語や古典的な言い回しをしないということですね。
違う所
それが翻訳する際の障壁にならないと思うんですが、こっからは能力の違いを言ってしまいます。
その差を言うよりも、はっきりいってこの二名を同列で扱うのは野暮も野暮だと思います。
知的レベルが違うんです。
「文学は多様性が・・・」って話もありますが、「みんな違ってみんないい」以前に作家としての格が全然違うと思います。
根本的に大江健三郎のほうが格上というのは、読み込めばわかると思います。
なぜなら根本的に勉強量と質が違うからでしょう。
そして人生経験も違います。
こっからは私の偏見です。
人生経験って言ったって年齢の差じゃなくて、大江氏のほうが時代的にも地理的にも苦労したのに対し、春樹はただの芦屋のお坊ちゃんですから、話に説得力や重みも哲学もありません。
大江氏はフランス文学者になろうとするほどフランス文学と哲学を読んだのに対して、
春樹は国語教師の両親の反発で外国文学を読んだのです。
大江氏はフランス文学を本気で読んでる感じがするんですが、春樹は憧れなんですよね。アメリカ文化への。
ダサいんですよ。笑っちゃうくらい。ただのあこがれじゃんかって。
表面さらってるだけの三流感があるんですけど、なんで売れてるかって言ったら
翻訳文学って根本的に母国語読者のことがわからないんです。
日本人が翻訳文学読んでも、雰囲気しかわからないように雰囲気読みをしてるんです。
両者とも日本文学には強く影響受けていないのは共通していて、平易な表現をするというのもヨーロッパ文学の特徴でしょう。
春樹のおすすめ本
ただそれでも春樹の本が読みたいのならこの二つがおすすめです。
英訳だったら異国の物語として読みやすいので私も驚きました。
しかも短編集で、英語の細かな解説と、翻訳と原文の違いを解説してくれているので、大変勉強になる。
なんだかんだでベストセラーなのでどんな話かを知っているだけでも教養になります。
大江のおすすめ本
大江氏の本はまんま読んでも面白いので、これが一番コスパがいいんじゃないでしょうか。
分厚いですが有名な短編がたくさん入っているので入門書に最適です。
あと、今出てるのはこの『全小説』シリーズ。
何がいいかって、この手の本なら当然ですけど解説がいいです。
小説本編だけを読みたいのであれば安い文庫本でいいでしょう。
しかし一般人は純粋に、深く大江の作品を楽しむのであれば、学者の読み方を補助として読んだほうが深く楽しめると思っています。
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