純文学読者は少ない
純文学って本当に少数の人間しか読んでないですよね。
だからこそ読みたいという人もいると思います。
そもそも感動するというのは「心と体が揺れること」です。
簡単な文学や動画でも感動することはあります。
でも純文学のように分かりづらい所で感動するというのは別物なんですね。
なぜかといえば一人一人心は違うわけです。
ですから大衆文学のように誰もが共感できるところで感動するのは、
心の外側の大きなところが揺れているような感覚
があります。
一方、純文学で言う感動は他の人にはわからないであろう、心のコア、核心部分が揺れるような感覚です。
これは自分にかかわりが深い所でも感動はするんですけど、外国文学でも感動するんです。なぜでしょうか。
それはわからないところにたどり着いた「何となくわかるような感覚」です。
哲学という学問は抽象的な「真実」を探求する学問ですが、真実だからこそ誰にでも共通して分かりえることです。
しかし文学は例えばなしなので身近な文化では無い話が出てきたり、言葉遣いが出てくると途端にわからなくなります。
しかしそれを調べ切って
「何となくわかる領域」
に達した時に他の方向から見る「真実」が見えたような気になります。
これもまた心が揺れる瞬間なんですね。
『カラマーゾフの兄弟』は難しい小説の代表格としてありますけど、それは当時の大衆小説です。つまり誰でも読める簡単な小説のひとつだったんです。
でも今はほとんどに人が読めません。
外国文学の場合は、
国の常識が違う
というのが大きいでしょう。
外国文学で一番難しい所です。
しかし今はネットで簡単に調べられますし、上のリンクにも張りましたが漫画版で読んでしまえば本編もかなりスムーズに読めます。
小説が読めないってなんか面白くないし、そういう人って言葉も知らないし、発想も貧弱だと思うんですよ。
次の段階としては小説をある程度読んでいるはずなのにその感想がまともに言えないというところです。
小説で感動しても「マジ神」としか言えなかったらしょうもないですよね。
ここは語彙力 に関するほかの記事を読んでいただきたいです。
この気持ちは何だろうと考えをめぐらす作業が語彙力も高めるんだと思うんですよ。
【関連記事】
とにかく情報量として単語量を増やすのは機械でもできることです。
人間ができるのはここだという時に取り出せる「センス」「情緒」。
全体の構成を考えて、個体の単語をつなぎ合わせる感覚が語彙力だと思います。
川上未映子の場合
例えば純文学の中でも中学生でも読めそうなものでは川上未映子の『ヘヴン』
これで感動したんですが、その心は、というと小説の全体性(構造)であります。
はっきりいってどこで感動したか、ここ!という話ではありません。
何度読んでも異なる箇所で感心するんです。
そういう重層的な心の動きが見込めるものが純文学で感動するところではないかと思うんですよ。
ヘヴン のテーマはこれだということもできないんですけど
- 「いじめ」
- 「道徳」
- 「自己同一性」
といったところでしょうか。
テーマだけ見たら羅生門 と似てる感じがします。
もう一回読んだらもっと増えると思いますが。
いじめの個所なんかもう辛くて、頭もたげもたげで休み休みでないと読めませんでした。よくある感嘆詞でぼやかすような安っぽい感動じゃなくて(それでもいいけど)
読み終えて数か月たってももしくは一生に掛けて、事あるごとに思い出すであろう感情の起伏と、道徳に関する考察があるんです。
【関連記事】
いじめの個所では怒りで顔が熱くなり百瀬のいじめの正当化の話では妙に納得して寒気さえする自分の体温変化に驚いたりするわけです。
つまり私の思う感動というのは、心と体に揺さぶりを感じることです。
- 気持ちの変化よりも先に体の変化に驚いて、
- それが心に起きたことだと勘違いするようであり
- 心に起きたことに体が反応しているようであり、
- どちらが先かは不明ですが自分の心身そのものの揺さぶりを感じる
感覚だと思います。
【関連記事】
小説を虚構だとして吐き捨てる輩もいますけど心に起こったことは事実であってそれが現実社会で起こったこととリンクして行動の変化も起きるんですよ。
一度心が揺れたことはどこかで止まるかというとおそらくその小説自体を読んだことさえも忘れたとしても一生揺れ続けるものだと思うんですよね。
それくらい自分のことというのはどうすることもできないんだと最近思いました。
つまり「泣いた」とか「マジ神」とかしか言えないんだったらしょうがないですけど、もう少し考えることで自分もわかるし語彙力も上がると思いますよって話。
【関連記事】
「芥川賞もらってやる」で有名になった田中慎弥も自身のエッセイのこれからもそうだ。で川上未映子を絶賛してましたね。
で芥川賞になった田中さんですがこれは暴力シーンも性描写も激しいので中高生にはおススメできませんが文学的によくできてる印象です。
【関連記事】