「文脈」が理解のカギ
辞書を読んだら語彙力は上がります。
しかし多くの場合は挫折します。
「辞書を読む」には得意、不得意の2パターンがあります。
- 読んでいるうちに面白さが分かって来る人
- ストーリーがないからイマイチ面白さがつかめない人
ほとんどの人が2。
だから辞書を読むことがメジャーじゃないんです。
辞書は、普通の本みたいに読むために作られてないから当然です。
自分は好きだけど、という人は読み続けて構いません。
でもほとんどの人が読めないのには理由があるという事。
よく見比べてみればわかりますが、普通の本と比べて辞書は、
- 紙が薄い
- 文字がぎっしり
という特徴があります。
紙が薄いってことは意外と知らない人が多いですが、触りくらべてください。全然違います。
なぜ薄くするかといえば辞書はどうしてもたくさんの情報を一冊にまとめないと売れません。そして厚すぎたり、または冊数が多くなる場合はそれだけ売れません。
広辞苑は年々文字数が増えているそうですが意地でも二冊にしませんよね。二冊だったらそれだけで売れないんです。
だからそういう工夫をしています。
そんなに厚くなくて、ちょっと厚い本って感じのソフトな辞書がありますがそういうものでも紙が薄いものがほとんどです。
それに気づかず、
「ちょっと分厚い小説くらいかな」
と思って全部読破しようとしても普通は無理。
普通の集中力では持ちません。
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読み比べをしよう
どうやって「面白さが分かる」かって言ったら、大概は「読み比べ」。
複数の辞書を読み比べて、どういう表現がなされているか考えるんです。
この「考える」という作業がカギ。
なぜなら、1冊だけ読んだら
- 既に知ってる言葉は「そうだね」と思うだけ
- 知らなかった言葉は「なるほど」と思うだけ
そもそも辞書は「そういうもの」。
だから機械的に知識をダウンロードしているだけです。
人間ができるのは「解釈」です。
その言葉のデータを集めて結局どういうことが言えるのか、自分の経験を踏まえて言葉にするんです。
解釈に絶対的な正しさはありませんから、自由気ままに解釈すればいいんです。
辞書はそれぞれ、解釈・表現の仕方が違います。
そうすると立体的にそのことが見えてきたり、編集のキャラが見えてきます。
同じようにたくさんの言葉を集めて、自分で言葉の定義をするんです。
これが自助を読むという事を最終的なゴールでしょう。
三島由紀夫は辞書を読んだと言いますが、彼の場合は作品に昇華させています。
言葉は使わないと意味がありませんからね。
つまり、
知った➔使う
という、言葉の「脈」を自分で作るんです。
「文脈」がカギと書きましたけど、「文脈」って「文」の「集積とつながり」です。
つまり沢山の情報を関連させていけば面白くなるんです。
とはいえ、いきなり素人が面白く読むのは時間がかかるのです。
そういう「面白がり方」はこういう本を読んだら更によくわかります。
語彙力と辞書
「語彙力」って言葉がブームです。
だから一番効率がいいと思われる「辞書読み」に手を付けるんですね。
私も中学、高校と試しては挫折を繰り返しました。
そこで思ったことは、挫折ありきで読むということ。
そもそも分厚いし、紙も薄く作られていますから、読み切ろうと思わなくてもいいんです。
読める人、語彙力に関心がある人なら自分でパラパラめくって適当に読んでいけばいいと思います。
「こういう言葉があるんだ!」
って感じで。
でも、ストーリー・文脈が無いと継続的に読み進めることが難しい人もいます。
というかほとんどの人がそう。
はじめの内は言葉を覚えられて楽しくても、全部を読み切ることは、よっぽどイカレれる人じゃないと無理です。
これは能力というより、向き不向きの差なので、自分が一番うまく行く方法でやりましょう。
ストーリーがあったほうが良い人は小説を読んだほうが良いです。
でもそれだと言葉を覚えるのに効率が悪そうだと思いませんか。
そんなことはありません。
言葉は「文脈」の中でこそ生きるものです。
よくネット上で「炎上する」って聞くじゃないですか。
あれのほとんどは文脈を読んでないからです。
文脈によっては良いことを言っていても、単語単語を区切ってしまうと全く意味が違ってくるんです。
単語は文脈と共になるので、全然効率の悪いものではありません。
色んな言葉を覚えたいのなら、
「ちょっと難しい小説」
を読むといいでしょう。
または「純文学」ですね。
ただ、小説を読み慣れていない人は、いきなり何を読んだらいいか分からないじゃないですか。
そういう場合はこちら⇓
辞書を読もう
語彙力は単純に言えば単語の意味を理解している量なので、辞書を読めば語彙力は上がるでしょう。
しかしここで「読む」というのは普通に小説を読むように一字一句読むことはないんですよ。もちろん読み方に作法はないので、しっかり読むこともいいと思います。
しかしそれだけではなくて、自分の気になる言葉を引いてそこや関連する言葉を改めて知るために読んだり、1ページ1ページめくって読むのはおススメできません。
適当に開いては読み、を繰り返すことだっていいわけです。
ですから自由度が高いんですね。
これを調べなくちゃいけない、たくさん語彙数を増やさなくちゃいけないって、くそ真面目に読んでいても義務的になって全然頭に入らない危険性があります。
でも一回見たことある言葉は大概頭の奥底に残っているものなので焦る必要もありません。受験勉強みたいにいつまでに何千個覚えるという感覚でできる人ならいいですけどね。
でも誰でも共通して言えると思うのは楽しむことです。
ですからカタログを見るような感覚で「へ―こういう使い方があるのか」なんて感心しながら読んでいけばいいんですよ。
その際はいちいち感動するので、すぐに脳みそに栄養が足りなくなります。
そうなると眠くなります。
そういうことを防ぐためにはアミノ酸(タンパク質)など適切な栄養を取りましょう。
おススメはナッツ類。
辞書もたくさんあるのよ
辞書と言っても学校で取り扱うものは大概が、国語辞典や古語辞典、英和、和英辞典でしょう。
しかし世の中にはそれ以外のものもあるので探してぺらぺら読んでみるのもなかなか面白いと思います。
- 作者: ホルヘ・ルイスボルヘス,Jorge Luis Borges,柳瀬尚紀
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もしくは小学生向けの辞書を読んでみると丁寧で簡単な説明になっているので語彙力を固めるためにもいいと思います。
新レインボー小学国語辞典 改訂第5版 小型版(オールカラー) (小学生向辞典・事典)
- 作者: "金田一春彦""金田一秀穂"
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三島と辞書
一方で「よっしゃ楽しそうだ。読むぞ!」と思っても上手くいかない場合もあります。
辞書を読むっていうのは、言葉好きの人であれば一度はやったことのあることだと思います。
私も事あるごとに試しては挫折し、試しては挫折の繰り返しをしていました。
ですから一冊すべて読むというようなことは基本的に時間の制約上難しいので、やめたほうがいいでしょう。
ふとした時に読むことをおススメします。
数単語しか読まなかったとしても、それをやって色々覚えた単語はあったので効果はあったと思います。
三島由紀夫は
「言葉を扱う前に事前に意味を知っておかないとだめだ」
というようなことを言っています。
大学の頃までは確かにそうだよなとも思いつつも、少し違和感を感じていました。
言葉って元来そういうもんじゃないよな。と思っていました。
この記事を読んでいるあなたも何となくそう思ってるんじゃないでしょうか。
言葉の最小単位は単語ですから辞書を読むことは効果があるだろうと思うことは自然なことですよね。
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三島由紀夫のこの話は有名なので辞書を読むということを実践してみた人は多いかと思いますが、実際どうでしたでしょうか。
ほとんどの人は楽しく読めなかったと思います。
私もそうでした。
予備校講師の林修が辞書を読むことをアピールしていたようですけど、彼のテレビで言っていることを考えてみると、辞書を読む効用は語彙力ではなくて辞書編纂の歴史、言葉の歴史が分かるってことですよね。
他にも辞書を読むことで言われている効用は、
- 一つの単語から複数の単語を調べるようになる。
- 用例が出ていてわかりやすい。
- 狭い世界だけでなくたくさんの言葉を知るきっかけになる。
といったところでしょうか。
ですから高校生までの子供は沢山辞書を引いて調べる訓練も含めてたくさんしたほうがいいと思います。
でもこれはあくまで教育レベル、基礎レベルの話ならいいでしょう。
それも語彙力の一つかもしれませんが、ただの一点でしかありません。
ストーリーもなくただの50音の羅列なので興味のある単語もあればそうでないものも当然あるんです。
三島はもしかしたら「興味ないものは飛ばせ」というかもしれませんが、三島の性格では恐らくちゃんと読んでいたんじゃないかと思うんです。
昔は本も貴重でしたし、街も静かだっただろうしネットもありませんでした。
だから予想するにネットサーフィン感覚で読んでいたかもしれません。
三島由紀夫に限らず昔の文学者はお金持ちばかりです。
だからそれくらい生活に余裕があったんでしょうと予想できます。
三島由紀夫は極端な堅物でした。
極端な保守主義で、だからこそ文学も明瞭でありながら色気のある文体で芸術的ではあるんです。
ただし辞書を読むのは方法のひとつで、それをやって覚える言葉もありますから、やりたいと思ったらぜひやるべきです。
楽しいんだったらどんどんやりましょう。
辞書を読むことが一番効率のいい方法じゃないかと思いがちですが、必ずしもそうだとは思いません。
普通の読書では得られない知らない言葉には出会いますからもちろんいいです。
しかしそれが最上の方法だと思えません。
むしろ最上の方法なんてないと思ったらいいでしょう。
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