私は毎月、文芸雑誌を数冊読んでるんですけど、今月『文學界』の新人賞の選評がおもしろかったです。
新人賞の選評はいつも面白いですけどね。
今回は「該当者無し」。
出版社もお金をかけて新人賞を作っているのに該当者無しじゃ大変だろうなとも思うけど、まあ新人賞だからしょうがないという気もしますけど。
一定レベルに達していないものを載せても賞や出版社自体のレベルも下がってしまうからしょうがないんですけど。
芥川賞直木賞は最近レベルが低くてもなにがなんでも出している感じもするけど、今回は置いておきます。
で、毎回、新人賞などの作品そのものというよりも私は選評が好きです。
新人賞は新人賞で読みはしますけど、所詮、新人。ですから、それなりに読んでおいて、それよりも百戦錬磨のベテラン作家の選評文のほうがずっと面白いですよ。
まぁ有名作家ばかりだから新人よりも馴染みがあるということがでかいけど。
何で面白いかって選考委員の「文学観」が見えるからです。
この雑誌にはそのほかにもいろんな小説もありますし、飛ばし読みでもいいですけど、いろいろ見てみることによって掴めるものはあるはずです。
読み慣れていない人のための本の読み方 - ノーミソ刺激ノート
しかも今回は比較的珍しい「該当者無し」なのでいつもと違った角度の話が読めるのではないかと期待しました。
予想通り候補作をめちゃめちゃに言ってるんですね。
それはその雑誌自体を購入してしっかり読んでほしいです。
雑誌だから立ち読みも可能かもしれないけど、有名作家5名の選評は全部で結構長く、一度読んだとしても非常に読み応えのある、唸れる内容だから是非買って何度も読んだほうがいいですよ。
文学についての考え方がほかの各作家の諸著作ではあまり見られないほど語られているんです。
それだけじゃなくても私は毎回いろんな文学が読めてお得感があるから文学雑誌を読んでいるですけど、本誌で楽しみにしてるのは西村賢太の『雨滴は続く』。
もし実際に受賞作が決まってしまったらそれを基本的にどこがよかったかをほめて、そのほかの候補作のどこに難点があったかを評するのが見どころです。
しかし今回は全部ダメということだったから、何故そうだったのかということを痛烈に書かかれている。これが文学の読み方として結構参考になります。
しかも選考委員の著作をよく読んでると、なるほどそういうところに気を遣っているのかと思い出しては納得し、という調子で今後の読書生活にも役立ちますね。非常に噛み応えのある読み物です。
私自身もまだ1回通読しただけなのでまた何度も読みたいと思います。
↓画像です。
文芸誌って読んだことない人多いと思うんですけどいろんな人の小説が載っていて本当に面白いですよ。それが2000円以下で読めるというのもいい。普通の文庫本を買って読むにしてもこれだけの情報量があるならお得です。
人が文学を読む意味を考える。(労働と合わせて) - ノーミソ刺激ノート
私は定期購読まではしてないものの、たまに読むんです。すると自分じゃ手に取らない人の小説も載っていて、しかも短いものも多いので読書の幅を広げるのに大いに役立ちますよ。
読書の幅を広げるっていうのは世界を広げるってことです。
この記事を読んでる人なら読書の大切さは充分わかってると思いますけど、一冊の読書から人生がドカンと変わることなんて簡単なことなんです。
もっと言えば書いてある一言で変わるじゃないですか。
それくらい他者の言葉というのは個人にとって力のあることですよね。
私は本を読まない人に対しては、まずは立ち読みでもいいからぱらぱらめくってみるところから勧めています。