難しいってなんだ
一般的に日本語は難しいと言われることが多いです。
日本人がそれを聞くと何となく優越感を覚えますよね。
でもそれはちょっと違うと思うんですよ。
私は日本語教師の経験があるんですが、その時の学生は、ほとんど中国人とベトナム人でした。
日本語を教える時は、当然初めは、
- ひらがな
- カタカナ
- 漢字
を教えます。
漢字テストをすると当たり前ですが、中国人のほうが圧倒的に有利です。
単語テストも漢字は中国語と日本語では70%同じ使い方をするので中国人が有利です。
つまり「難しい」とは、今の知識との距離が遠いと、難しいと感じるんです。
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ですから言語が難しいというよりも、上位概念である「文化」の距離が遠いと言語も難しいと感じるんです。
例えば、小説を読み慣れていれば、多くの小説が読めるようになります。
一種の格闘技をやっていれば、別の格闘技も覚えるのが早くなります。
これと同じ。
言語の場合は、英語はドイツ語などのヨーロッパの言葉と語源を一緒にしているので、覚えやすいんです。
日本語の場合、音声としては
- モンゴル語
- トルコ語
文字では
- 中国語
などと、アジア圏の言語と共通点はあるものの、明確な語源が見つからないものも多いんです。
つまり比較的、孤立した言語体系なんですね。
言語の要素は大きく分けてこのように分類されるでしょう。
- 文字
- 語彙
- 文法
- 発音
言語が「難しい」とは「覚えにくい、とっつきにくい」という事です。
なぜ、とっつきにくいかといえば、今持っている知識でもって、引っかかるポイントが見つからないからです。
知識というのは、構造的なもの。
つまり知識同士の繋がりによって固定します。
今知っている知識との関連性が高いと覚えるのが簡単で、知識がないと難しいのです。
ですから以上の四つの要素が似ている言語同士なら簡単に分類され、違えば違うほど難しいという事になります。
「覚えにくい」というのは現状持っている知識との関連性が持てないんです。
日本語と似ている言語
たとえば日本人が英語を覚えにくいのは単語も文法も関連が殆どないからです。
逆に日本語になじみのある中国語なんかをちょっと勉強してみると、文法は英語に似てるし、言葉は漢字ばかり。
なので、英語を初めて勉強する時よりも呑み込み早くいけるので楽しくなっていきます。
日本人が覚えやすい言語は
- トルコ語
- 朝鮮語
- インドネシア語
- モンゴル語
- 中国語
と言われています。
中国語以外は日本語と単語と文法が似ているので覚えやすいですし、中国語は文法は違いますが漢字の覚え方は圧倒的に有利です。
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新しい知識は既存の知識との関連性で覚えます。
ですから日本語を勉強する外国人は母国語との関連性を持って勉強します。
しかし日本語は語源が確定していない言語なので覚えづらいんです。
例えば英語とドイツ語は語族が一緒なので相性がいいんです。
だから両者の母国語話者はお互いの言語を覚えやすい。
もっと言えばヨーロッパの言葉全体がそうです。
ですからお互い強めの方言を話しているようなものです。
「日本人が外国語を覚えにくい」
というのはその逆の理由で、日本語と共通点のある言語が少ないからなんです。
だから、相対的に、日本語は難しくなります。
ということはある程度の系統、種類の言語を覚えれば覚えるほど外国語習得が簡単になるという事。
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日本語(文化)は特殊
文化が違ってくると、言葉も変化します。
日本語教師をやってて思ったのは、実践的によく話す学生(特に女子が多い)もよく上達しますけど、漫画やゲームをやっていて日本の文化をなんとなく知っている人も上達が早いんです。
言語を学ぶとは文化を受け入れることなんですね。
神道もそうなんですけど、古すぎる言葉や文化というのは起源が遡れないんです。
日本では何でお辞儀をするのとか、地鎮祭の時にはなんで簡易な囲いを作るだけなのとか。
古い習慣というのは初めに何かしら作った人がいるかもしれないけど、その記録は残らなくて、習慣だけが形として残るんですね。
これが宗教の最終的な形だって本には書いてありましたけど、言語もそのはずです。
ヨーロッパの言語は戦争が盛んでしたから言語の入れ替わりや統合が頻繁に続いたので範囲が広いおかげで記録も残りやすいし証拠が残る。
ところが、日本は国内だけで完結してたまに来る外国語を輸入して独自にこねくり回してるからわかりにくい。
証拠を広い範囲で集められないんですね。
そんな日本語は外国語との関連性が薄いから覚えにくいというのもあります。
ですから相対的に特殊にならざるを得ません。
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言語の経済的価値
先に「日本人が覚えやすい言語」を紹介しました。
- トルコ語
- 朝鮮語
- インドネシア語
- モンゴル語
- 中国語
これらを見てどう思うかといえばマイナーな言語ばかりだなと思ってしまうのが正直なところでしょう。
逆にメジャーな英語圏の人は、あんまり外国語を知らなかったりします。
外国語を覚えなくていいというのは経済的な優位性だからというのもありますし、歴史的に必要性があまりないんですよね。
特に使用目的もなく外国語を覚えるのはスポーツはしないけど筋トレをするようなものです。
筋肉は本来運動をしやすくするためにつくものですがオシャレのために筋トレをする人がいます。
手段が目的になった例ですね。
同じように言語というのは本来、手段ですが「外国語が使えるとオシャレ」ですから勉強している人もいるわけです。
【手段】 【目的】
筋トレ → 運動ができる
外国語学習 → 外国人とコミュニケーションが取れる
オシャレ以外でも覚えたらいいと思うのは「楽しいから」っていう理由が大きいですね。
今まで外国語といえば英語しかやらない人が多いですけど、もう一つ勉強するだけで「外国語とはこういうものなのか!」という興奮があります。
学習はそもそも楽しいものですし、言語は人間にとって人間たる由縁だというくらいの重要なことですから何かと使えることも多いです。
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一応、朝鮮語やモンゴル語などのアルタイ語族ということになっていますが、それでもちょっと違う。

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地理的な問題だとも言われています。
日本は極東に存在して、あらゆる民族が移動して最後にぶち当たる場所なんですね。
決して大陸、朝鮮半島ばかりではなくて、インドネシア諸島方面からも来ています。
一方で日本語は簡単だという人がいます。
それは中国人や朝鮮半島の人が学ぶ場合、単語に共通点があったり、文法が朝鮮語とほとんど同じなので簡単に感じるでしょう。
しかし本当に細かいことを言ってしまうと、日本語は外来語が非常に多いんです。
日本語は外来語の言語だと言ってしまっていい位多い。そこまではわかりますけどじゃあ起源は?となると結局わからずじまいです。
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