一生懸命読まない
アイデアのためにたくさん本を読むことは大切です。
でも、それって忘れるじゃないですか。
人は「無くす」「忘れる」ことに敏感に反応し、損害を感じます。
でもそれって「アイデア」にとっては良いことなんですよ。
しかも、
「忘れないように~」
と思って力を入れて読んでしまうと、そのうちに読書が嫌になってしまいます。
そうなるとせっかくのアイデアのための読書さえしなくなります。
ですから重要なことは「忘れても気にしない」ということ。
それくらい、リラックスした状態でいることが大切です。
1000年前の中国の作家、欧陽脩(おう・ようしゅう)が、文章を作る場所として、
「三上」(さんじょう)
と名付けた場所があります。
すなわち、
- 馬の上 ➔移動中
- 枕の上 ➔寝る前
- 厠(トイレ)の上 ➔トイレの最中
ということ。
これは要するにリラックスできる場所ってことです。
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アイデアとは
アイデアの語源ってプラトン哲学で有名な「イデア」ですけど、その意味は
- 「理想」
- 「見ること」
で、直接意味は通じ合ってはいません。
でも「理想」っていう意味では「大体こんな感じ」っていうふわふわとした感覚が通じていると思っています。
「アイデアとは忘れることにかなり依存する」
って荒俣宏が言ったらしいですけど、それは本当にそうだと思います。
喰らう読書術 ~一番おもしろい本の読み方~ (ワニブックスPLUS新書)
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- 「これはこうだ」
- 「こうじゃなきゃいけない」
って思っている人は案外いいアイデアは出せない印象があります。
それは概念が固定されちゃうからですね。
「こうかもしれないけど、こうだった気がする」
というように固定されない感覚が重要。
例えば宮崎駿は人物観察、風景観察を本当によくしたってプロデューサの鈴木敏夫が言ってました。
だけど、よく観察しても忘れてしまう所があって、そこを想像力で埋めているって言っていました。
コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)
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だからこそ、リアリティがあって独自性があるんですね。
絵コンテ集は本編に書かれていない細かい設定が書かれているのでファンでなくても絶対に読んだほうが良いです。
紅の豚 スタジオジブリ絵コンテ全集〈7〉 (スタジオジブリ絵コンテ全集7)
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「なんとなく」の読書
たとえば、難しい本を読むのっていいですよ。
「なんとなく」理解でOKで、その後にそれに関する話を聞けば、
「聞いたことあるな」
と思えますよね。
全部覚えるのはAIがやることですが、「なんとなく」覚えるっていうのは人間しかできません。そんな欠落からの無限の想像力が創造性を生むんです。
私の記事の考え方の基礎って当然読書なんですけど、誤解を恐れずに言えばそこで紹介する本はしっかり読んでいる本っていうのは少ないです。
そんなの紹介していいのかって思うでしょう。
しかし基本的な考え方の本は何度も読んでいるものですからすぐに思い出せるんです。
基本的な本というのは思想書や宗教書、哲学書です。
普段意識しないですけど、人間の考え方の基礎っていうのは宗教観なんです。
例えば宗教なんてない。物理だけで世界は動いているっていうのであれば、そういう宗教観です。例えば共産主義なんかはそうですね。
国語が苦手な人はその理由として「答えが複数あるから」っていう人がいますけど、そういう人は「答えが一つ」っていう考え方の方がしっくりくる、分かりやすいってことだと思います。
そういう考え方っていうのは一神教的です。
そうすれば目指すべきことが分かりやすいですから、勉強する方向、努力する方向が定まっているからわかりやすいんですね。
理系、科学的な考え方の基礎はその考え方です。
その方向で進めば実益が得られますから、「お金が得られるのは神に認められているからだ」という極端な考え方が出来ました。
近代資本主義の倫理観、正当性は宗教によって得られているわけです。
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ただ騎士スト今日の中でもそれと真反対の考え方もありますから、一神教がそれを作ったという考え方だけではうまく行きませんけど。
「考え方が複数ある」っていうのは「世界は割り切れない」っていう考え方です。
となると、答えが無いわけですから不安に思う人も売るでしょう。
けど、割り切れない、答えが複数あるってことは、「アイデアも無限にある」ってことですよ。
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答えが一つだったらアイデアは生まれない
「世の中に答えは一つだけ」
っていう考え方であれば、世の中に読むべき本は一冊で済むわけです。
実際、イスラムの世界ではコーランが絶対的な本です。
アラビア語では日本語と同じように書き言葉と話し言葉がありますけど、その二つには大きな開きがあるんです。
NHKテレビ テレビでアラビア語 2018年度―謎と不思議の冒険“学習"旅行へ (語学シリーズ)
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なぜならコーランに書かれていることが現代人でもわからないといけないので、書き言葉を変えてはいけないんですね。
それならコーランも現代語のすればいいじゃないかという話になりますがそうはいきません。
コーランは詩なので「音」「リズム」が非常に大切です。
音が変わってしまえば意味がないんですね。
アラビア語に限らず、文学、言語学の中で音というのは非常に重要なポイントです。
一方、それでも言語は自然と変わらざる負えないところがありますから、話し言葉は現代に沿って変わります。
ですからいわば、日本語で言えば両者は古文と現代文くらいの違いがあるんです。
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実学と虚学
実際にお金になるような学問を実学(じつがく)といいますが、これらの思想書の類は虚学(きょがく)といいます。
これらの学問はそれだけでお金になるようなことは殆どありません。
しかし読書をする、人生を生きる上で、大きな支えになるんですね。
人間はお金があれば生きていけると思っている人が多いですが実際はそんなことはありません。
衣食住が整っているだけの人こそ、新興宗教にハマってしまいがちです。
なぜなら人の人生は割り切れないからです。
日本人には宗教観が無いと勘違いしている人がいますけど、誰だって根本には宗教観は持っています。
そういうものが無いと生きていることが空虚になるからですね。
ですから宗教の否定をしているとアイデアは生まれないし、生きること自体にも意味を見出せなくなって虚脱感に襲われることになります。
意識していなくても人間は常に考えているんですね。
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