ポイント
以下にポイントを上げますが、これは最低限、論文を読む必要のある大学3~4年以上の人に向けた記事です。
それ以外の人は趣味レベルで読むことは良いですが、素人が論文を読もうとすると普通はチンプンカンプンで歯が立ちません。
もし読めると思って読んで、それを自分の解釈で勝手に読んで他人に話すと、100%「嘘」になると思ってください。
なぜなら日本語で書かれている論文でも、言葉の使い方が全然違うので読み方が全然違ってくるからです。
以下のことがポイント。
- その学問全体の歴史
- 先行研究
- 著者の最終結論
ここですね。
1と2の違いが分かりにくいですね。
例えば「夏目漱石の『坊っちゃん』の研究」をやりたいのであれば、
「日本文学」がまず学問の全体。
「海外文学」を含む「文学」っていうもっと大きい分類を持つことも可能ですが、そこまでいくと大学生は大変なので、大学の学科では言語や国ごとに分類されていることが多いです。
そして、先にやっている『坊っちゃん』の研究論文が「先行研究」。
これを全部読んで、そこに入るスキを見て、卒論を書くっていうのが大学4年生のやること。
研究は「つながり」である
この「全部」っていうのが大事で、「そんなの大変だろ」って思うくらい研究が膨大で読むのが大変なのであれば、もっとそれを狭めるしかありません。
事実、漱石の研究なんて日本文学研究で世界的に一番と言っていい位やられているので、ここまでざっくりした範囲は大学4年生レベルでやるようなことではありません。
ですから作品のもっと細かな表現の研究とかなら、先行研究がぐっと少なくなりそうですからそこをつくことなら可能かも。
論文の切り抜きが問題視されていますが、それは「重要なところが抜けている」という意味。
つまり「先行研究を全部」読む必要性は「抜け」を無くすためです。
言葉はぶつ切りではなく「つながり」です。
つながりが無いと意味が通じませんからね。
魚の話をしているのに、何の説明もなく野菜の話を放り込んだら意味が分からないのと一緒。
だからいわば、たくさんの先行研究の全文が1つの文章みたいなもの。
その前提を全部読まなければ話をつなげることが出来ないってことです。
その重要なところというのが、繰り返しますが
- その学問全体の歴史
- 先行研究
- 著者の最終結論
以上の3点。
文章はつながりです。
だからそのツボを押さえて切り抜くことで正しく読むことができます。
人は誤読するもの
読書に誤読はつきものです。
「論文」となれば、その学問の背景を知っていないと分からないことがあります。
大学1年はその学問の歴史から学ぶじゃないですか。
それは誤読を防ぐためです。
学問は積み重ね。
いきなり最新の情報を聞いても、「なんとなく」わかってしまったらそれは誤読の危険が高いんです。
テレビやネット動画ではそれを面白おかしく最新情報と銘打って教えていますが、それは「ほんまでっか!?」と信じすぎないことが重要。
そして最新論文こそ疑って読まないとマズいです。
なぜなら新しい研究は批判が少ないから。
論文は批判ありき。
なぜなら論文はあくまでその人の「主張」でしかないから。
「世界大学ランキング」の基準で「研究論文の引用数」っていう基準があるそうです。なぜ「引用」が重要かっていうと、それだけ人が読んで、賛同を得て、他者の論文の前提知識として使われているから。
「論文を書く」っていうのは謂わば仕事なので、「使われてなんぼ」みたいなところがあります。他者に使われているものが実績です。つまり論文も商品のようなもの。
そして、歴史を知らないことはその商品を間違った使い方をしてるってことです。
間違った使い方をしているようなものは信用ならないし当然商品になんかなりませんよね。
例えば古典を、古典の常識を勉強せず現代の感覚で読み進めてしまうと「読めてる感覚」だけはある可能性があります。
実際は誤読してしまうんだということをしっかり覚えておいてください。
特に歴史を知らないとまずいのは、何が新しいのか、何が古いのか、ということを知らないとまずいからです。
私は大学院まで古典をやっていましたからそのことを知らないと歴史感覚を疑われます。だから「いつの話か」ということが重要なんです。
理系でも同じことがあるでしょう。
論文を読むのは楽しい
個人的に読む分には誤読してもいいでしょう。
というか初めはそういうものです。
誤読したまま発表するからまずいんです。
初めからわからないのでは「誤読」も仕様がありませんから、いいでしょう。
しかし生半可な知識で読む場合、何となくわかってしまうせいで「誤読」をしつぃまって、それを世の中に広めてしまう可能性があります。
世の中のほとんどの人は「論文」は「科学的に正しい情報」だと思われがちです。
しかし論文といっても響批判にさらされています。
一本の論文が30年も批判されずに残るケースのほうが少ないといわれるほどです。
ですから論文といえど「絶対に正しい」と思わないようにしましょう。
かと言ってそうなったら紹介しづらいですから、紹介する際は、「~~年の論文」というように年数もしっかり入れたほうがいいですね。
人は権威的なものに弱いですから、「有名大学の論文です」って言われてしまうとそれだけで信じてまう人が多いんです。
ほとんどの人は読み方もわかりませんからね。
正しい読み方を覚えて、批判をされないようにしましょう。
簡単に論文を検索できる
大学に入ると論文検索の仕方や、図書館の利用方法を教わりますよね。
最近は図書館に行かなくてもデータ化が進んだおかげで素人でも論文が簡単に読めるようになったので、論文の誤読が頻繁に起こると思われます。
特にYoutubeやブログなどでは素人の大学生が「論文読める!」という興奮から、その論文解説をすることが有る可能性があります。
実際そういう人がいましたし、これからも起こると思います。
繰り返しますが個人的に読んで楽しむ分には構いません。
誤読もあるでしょう。
しかし、最近はそれが収益になりますから、暴走してどんどん個人の誤読を広めてしまうということが起こりかねません。
ですから論文とはどういうものかをしっかり意識しましょう。
論文の構造
おおよその論文の構造はこうなっています。
- 題名 (Title)
- 要旨 (Abstract):つまり要約。
- 初めに (Introduction):研究の動機。
- 先行研究 (Literature Review):過去の研究まとめ。
- 方法 (Method):分析・実験の方法
- 結果 (Result)
- 考察 (Discussion):結果からわかること。
- 結論 (Conclusion):著者のまとめ。
- 参考文献 (Reference):参照した資料。結構重要。
論文を書く際は参考文献はしっかり残しましょうと言われると思います。
私の場合は
「参考文献は使ったときにまとめてエクセルに残しておけ」
って言われました。
なぜそこまで気を使うかといえば「パクリ問題」があるからですね。
読む際も参考文献はどういうものを使っているかをしっかり見ましょう。そして読めるものは読みましょう。
人の文章、写真を使っても一向にかまいませんが、それがどこからの引用なのかははっきりしないと泥棒扱いされます。
それと論文を参照しても、その読み方が誤読だった、ということはよくあることです。だから大学では4年も学ぶことがあるんです。その学問の歴史を知らないと論文は間違って読むことが良くあります。
学問は歴史の積み重ねです。
論文を書くことは、ほとんどが読むことです。
しっかり読みつつ、たくさんの文章に触れて、何が正しいかをしっかり見極めましょう。