日本人は知っておくべきなのに、「日本語史」って知る機会無いよなぁ。
— KEC@難解読書@ブログ@リライト中心モクモク (@kec_twitt) 2018年11月7日
それを知ると外国語との違いも分かって、勉強にも役立つのに。
例えば、
・日本語には一人称が異常に多い。
・平安時代以前まで日本語には「ん」が存在しなかった。
この辺のことをまとめてみようかしら。
日本語の全体の歴史なんか膨大すぎるので普通、ブログの記事に書けるはずもありません。
が、だいたいの日本人が知っておくべきことはまとめておいたほうが重要はあると思ったので、それを記録しておきます。
日本史や古文はやるのに日本語自体の歴史っていうのはなかなかやらないですよね。
もちろん教育する上で「これをやったほうがいい」というものを挙げたらきりがないのは当然です。
歴史なんて知ってもしょうがない。
と思ってしまうのは当然です。
でも歴史を知ることによって言葉の本来の使い方の感覚が身に付きます。
それによって語彙力の底上げになるんですね。
普段は何となく聞いた言葉を使っているだけですけど、その概念を知ると使い方が変わって来るのは当たり前のことです。
だからそれをこのブログでできるだけまとめたいと思います。
先に言っておくと、日本語に限らず言葉はどんどん変わっています。
日本語の歴史は日本の歴史がガラッと変わった時に言葉も変わっています。
例えば、
- 飛鳥~鎌倉時代(仏教伝来から日本仏教成立)
- 明治時代(開国)
- 昭和時代(戦後)
など、文化が大きく導入されたときに新たな概念が入ってきますから変化せざるを得ませんでした。
上に挙げたのは本当に一部です。
ほとんどの人が「確かに」とピンとくるでしょうけど、本当は細かく言えばもっといっぱいあったでしょうし、もっと昔の文字以前で世界であればもっと何度もあったでしょう。
しかしそれは分からないんですね。
日本語はどこから来たのか?
他の言語は似ている所がいろいろあるんですけど、特に日本語の場合は他の外国語と比べて似ている所が少ないんですね。
他の外国語の場合は、共通点を見つけやすいので、それによって言語の道筋がわかるようになっていますが、日本語の場合はそれが少ないんです。
だからといって宇宙から来たとか、神の国だからとかいうトンデモな話ではないです。
もちろん似ている外国語はあって、朝鮮語やトルコ語、モンゴル語と似ているんですけど、それでも少ないんです。
なぜかといえば、どの系統の言語かいまだに明らかにされていないということです。
分かっているのはウラル・アルタイ語系ということ。
言語には「語族」という考え方があって、もともとはイギリス人が植民地のインドの言語研究をしていたら、遠く離れているのに言語体系が似ていることに気づいて、その関係性を「インド・ヨーロッパ語族」(印欧語族)と名付けたところから始まったらしいです。
でも、色んな言葉が混ざっているので、特定はできません。
何で混ざっているかといえば、地理的にユーラシア大陸の極東にあることと、東南アジア系の人たちも古代から海を渡って来ていて、日本に定住してしまっているからだそうな。
ユダヤの言葉も入っているという話もありますけど、それは学問的には立証されていません。
そういう話を知ると楽しいというのはありますけど、そういうのが好きならば、話す相手を考えて話したほうが良いですね。
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この本は「ムー」が関係しているのでオカルトな話です。
そこまで本気にせず、「そういう話もあるんだ」って感じでいいと思います。
他の地域では人は一方向に流れて、お互いに交流することはあっても、そこまで複雑には絡まってはいないけど、日本語の場合はおそらくその絡まりが昔から激しかったんでしょう。
文字以前の世界
文字以前の世界について書くことは非常に困難です。
なぜなら学問は基本的に文字表記されたものを相手にするからです。
「証拠」(エビデンス)が必要ですからね。
だから文字以前は文字に書かれていることでそれ以前のことを想像するか、考古学のように土器や骨などの生活の痕跡から推測するしかありません。
そしてそれに関してこのブログで書くことも非常に困難です。
書くとなれば何冊も本が出てるくらいですからね。
本当に知りたいのであれば、↓のおすすめの本を読んでください。
一番わかりやすいのは山口仲美先生の本ですね。
全部を一度に理解するのは難しいですけど、読めそうなところだけ飛ばし飛ばし読むだけでOKです。
音声について
日本語の音声は昔と変わっていないかというと全然違ってるんです。
昔の日本語はもっと遅かったし、音の数も多く、複雑でした。
中国から入ってきた漢文を一時期はそのまま使っていました。が、漢文は文法が違いますよね。返り点とか入ってたし。
日本語と使い方が違うから違和感を感じるわけですよ。
だから、漢字の音をそのまま使って、文法は日本語にしたわけです。
それが万葉仮名です。
音の数が複雑だったというのは、今の母音は「あいうえお」の5音ですが、昔は8音ありました。
さらに
「はひふえほ」は「ぱぴぷぺぽ」
「さしすせそ」は「つぁつぃつぅつぇつぉ」
と後者に発音していました。
自分で発音してみると分かりますけど、口の筋肉をよく使います。
だから面倒なんですよね。
しかもちゃんと発音するとなると時間がかかるので、話し方がもっと遅かったでしょう。
じゃあなんで分かるかといえば、漢字の使い分けがされていたからです。
国語の授業で習うと思いますが「ゐ」「ヰ」や「ゑ」「ヱ」も100年前なら使われていましたけど今は普通は使わないじゃないですか。
本当はもっと多かったんですけどね。
何で減ったかといえば、使わなくなったからです。文化は色々変わりますからね。もう一つは教育上、教えるのが大変だからです。
使わなくなったから教えなくなったというのもありますけど、教育と文化の関係はそんな奇麗にスパッと割り切れるものではありません。
どんどん言葉も効率化されて、不必要な音や言葉を減らしました。だから音も削減されて現代は昔と比べて速くなってるんです。
だから平安時代の日本人と現代日本人とでは言葉は通じません。
よーくきくと何となくわかるかもしれませんが。
今もそうですけど概念はどんどん増えます。増えるばかりでは子供の間に教えるのは大変です。だから教える範囲を決めないと大変です。
現代教育でもドンドン教えるものを減らしていますが、それは昔からそうで、詳しくは「日本語の文字について」に書きます。
「神代文字」について
漢字以前で言えば、「神代文字」(かもよもじ)っていうのがあるっていう話が有るんですけど、それは学問的には証明されていません。
一部には物凄く支持されていて、当然のように書かれているものがあるんですけど、学問的にはトンデモの部類です。
支持することは勝手ですし、私自身はそこに注力していないので、知りたい人はその本を読んでみるといいかもしれません。
好きな人は好きだろうって感じです。
私自身の感想としては、有ったかもしれないけど、一部の古代宗教儀式の中で使われていた可能性があるだけで、一般流通もしていなかったし、貴族間でも使われていなかったでしょうねって感じです。
とはいえ、日本語の歴史を調べていくと絶対に出てくる話なので、名前だけは知っておく必要はあります。漢文の参考書にも書かれている場合がありますし。
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「言霊」について
よく「言霊」(ことだま)っていうのが言われるじゃないですか。
それって「霊」って文字があるから宗教的で、学問的に取り扱うことが難しいのかって言ったらそんなことは無いんですよ。
なぜなら『万葉集』にもその言葉が使われているからです。
神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり
(意味:神の御代より言い伝え来ることには、空に満ちる大和の国は、神である天皇の統治される厳しき国で、言霊の幸ある国と語り継ぎ、言い継いで来た)
磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ
(意味:日本は言霊が助ける国です。無事ですよ、と私が宣言したんだから大丈夫)
なんで「言霊」かっていうと、文字以前は音声しかなかったわけです。音声情報が情報のすべてと言ってもいい位です。
ですから今以上に「音声」による言葉の影響に関しては敏感でした。
例えば本名は知られたら呪われる危険性があるので教えませんでした。
たかが「音」、「空気の振動」に過ぎないと思っても、人はその音の情報に敏感に反応し、病気になることだってあります。
それは漢字が入ってきて、仮名(ひらがなとカタカナ)が作られホヤホヤの平安時代でもそうでした。
国語の授業で「紫式部」や「清少納言」や「菅原孝標女」(すがわら の たかすえ の むすめ)は、本名じゃなくて役職や、家柄、立場を表した呼び方という風に習うはずです。
私の場合は「女性差別だから」という理由を教えられましたけど、それは嘘です。
理由は女性を守るためです。
政治の世界では今以上に危険が付きまとい、女性は政治の道具に使われかねないので大事にされていました。
だからこそ本名は教えずに、役職を呼び名にしたんです。
これって「呪われる」っていうと、大昔の野蛮な昔話かと思う人もいるでしょう。
けど、よくよく考えてみてください。
親しくもないのに下の名前で呼ばれたりするのって、なんとなく今も嫌じゃないですか。
たとえば「あなたの家のお母さん」という話ならまだしも、「あなたの家の花子さん」ってお母さんの本名をいきなり言われるのはギョっとしますよね。
距離感が一気に縮まった感じがします。
それがお父さんならまだいいけど、お母さんや娘のように女の人の名前を急に出される場合は「こいつ気持ち悪いな」って「なんとなく」思うじゃないですか。
その感覚が「言霊」感覚の一つです。
今は公的機関や警備体制が昔よりは整っているので、そこまでギョッとしないかもしれませんが、昔は貴族であっても警備はマンパワーだけなので大したことないわけですよ。
だから余計に怖いわけです。
「言葉」の「言」と「事柄」「事件」の「事」は同じ「コト」で、語源は一緒だという事は分かっています。
かと言って、同じ音の言葉はすべてそうかと言ったらそうではないんですね。
昔は今でいう「50音」以外にも「音」は沢山あったんです。
詳しい話は本を読んでください。
日本語の文字について
日本には仮名(ひらがな、カタカナ)と真名(漢字)があるということは中学校で習うことです。
仮名は元々は「万葉仮名」というのがありました。
中国から持ってきた漢字に日本語の読みを与えるために、漢字音だけ借りた使い方「仮借」(かしゃ)です。
なんでこういうものが出来たかといえば、昔は漢文を持ってきたので、文法も単語も、昔の中国の使い方そのまましか使えませんでした。
しかし外国なので感覚がどうしても違うわけですよ。
自分たち日本人が使っている言葉との違いが激しいので、どうしても気持ち悪い。
だから、漢字の意味の部分は取っ払って、とりあえず音だけを引用して文章を作る手段として考えられたものです。
⇓これは例です。もっとたくさん種類があります。
ときどき、蕎麦屋さんや鰻のノボリで見るグネグネっとした読めない文字ありますよね。あれです。
「者」を「は」と読むのはよくわからないかもしれません。しかし漢文では格助詞の「は」(私はの『は』)として使われます。
「幾楚者゛」と書いて「きそば」と読みます。
平仮名がたくさんできてしまったので、それを必要最低限に限定し、教育しやすいようにしたのが現在のひらがなで、使われなくなった言わば「異体字」を「変体仮名」といいます。
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日本語は読書に適してるって知ってた? - ノーミソ刺激ノート
日本に文字が発生しなかった理由を考察 - ノーミソ刺激ノート
一人称についてはこの記事に書きました。
「ん」について
「ん」は特殊な音で、50音の中で最後に追加されました。
追加される前では存在しなかったんです。
それに関して詳しいことが書かれているのはこちら。
端的に言えば、平安時代、空海が仏教研究の上で編み出したのが「ン」です。
仏教に少し詳しい人ならピンとくることでしょう。
そう。「阿吽」(あ・うん)の「吽」(ん)です。
空海は「吽」に関しての研究としてこの本を書きました。
しかしよっぽど仏教に関心が無いと難しいので、山口先生の「ん」の本を読むのがいいでしょう。
この本も言語学に関する詳しい説明が入っていますけど、初めは難しい所を飛ばして読んでも十分楽しめます。
その他の日本語に関する本も、山口先生の本はハズレがありません。
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もともとは無かったものが今でも使われているのは、何も仏教が今でも心に沁みついているとかいう話とは別物だと思います。
それとは別に、「ん」というのはそれを使う事によって「リズム」を整えることが出来たんですね。
それに関しては↓の記事をどうぞ。
「なのです」と「なんです」の使い分け - ノーミソ刺激ノート
三島由紀夫と仏教思想について考える。 - ノーミソ刺激ノート
リズム感について
日本文学には世界最短の詩の形と言われる「俳句」があります。
万葉集は一般の人の歌も入っていますが、西洋では基本的に詩を教養のない一般人が歌うことはありません。
なぜなら創作は限られた人「桂冠詩人」(けいかんしじん)しか作れないものとされていました。
西洋では創作は神がなす業なので一般人にはできないとされていたんですね。
ではなぜ日本人は簡単に詩を作るかといえば、詩の要素は、
- 韻を踏む
- 比喩、例えること
重要なのは以上の二つで、特に技術がいるのが「韻を踏む」事です。
が、日本語は同音異義語が多いうえに全ての文字に「母音」(あいうえお)が入ります。
それに対して英語などのヨーロッパの言葉は子音(kstn…)が多いんですね。
ですからダジャレでさえ、生み出すのに苦労します。
日本語では「くだらないシャレ」で「駄洒落」ですが、言語の違いでこんなに差があるんですね。
ちなみに『不思議の国のアリス』(Alice’s Adventures in Wonderland)の原文は高等な駄洒落のオンパレードです。
- tale(お話)と tail(尻尾)
- not(無い)と knot(結び目)
- antipathy(反対)と antipodes(反対の場所)
なので外国人が日本語を話すときに嬉しそうに駄洒落を話すのは母国語ではなかなかできないことだからなんですね。
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「ひめたんびーむ」が流行ったのは文学と言語学的な理由がある - ノーミソ刺激ノート
音楽のと文学のリズム感は通じる(漱石は多分音楽が好き) - ノーミソ刺激ノート